インタビュー

空想レジン作家・ayk✳︎regolithさん「わたしの見ている世界を切り取って」

思わずうっとりと見惚れてしまう繊細なデザインと美しい色合いが魅力的な作品を制作するayk✳︎regolithさん。SNSで話題となったティーポットシリーズをはじめ、ファンを魅了する作品づくりについてうかがいました。記事公開に合わせて人気作品の販売もスタート。最後までお見逃しなく。

ayk✳︎regolith
「なにそれかわいい!」といわれる、人とはちょっと違ったものを身につけたい。だけど奇抜すぎないものが好き。ガラスのような透明感のあるものが好き。そんな方へ向けたアクセサリーを制作。
https://minne.com/@hatesate

東京から飛行機で2時間ほど。「画面越しに見ていた作品にやっと会える!」と胸を高鳴らせて、minne編集部は本格的な寒さに入る前の穏やかな秋の時期に、北海道へ向かいました。

「遠くからわざわざありがとうございます」とayk✳︎regolithの彩花さんが、人気の「午後のひと時」シリーズを準備してお迎えしてくださいました。


SNSで拝見していた作品をやっとこの目で見ることができました。ずらりと並んでると圧巻ですね。どの色もかわいい。

彩花さん
ありがとうございます。全部で10色あります。おかげさまでたくさんの方にご覧いただいています。

これだけカラーバリエーションが揃ってることは珍しいんじゃないですか?

彩花さん
たしかに、全部揃ってる状態をご覧いただける機会は少ないですね。ただ、以前コンプリートセットというすべてのカラーをセットで販売したのですが、購入していただいた方がいて。とても嬉しかったです。

たしかにこれはコンプリートしたくなっちゃいますね。お気に入りの作品はありますか?

彩花さん
実際にわたしがつけるってなると「白湯とお冷」という作品がシンプルでつけやすいので気に入っています。

白湯とお冷を作品に落とし込もうとするセンスが、本当にユニークで見ているだけで楽しくなります。

組み合わせて表現するわたしの世界観

レジンとの出会いを教えていただけますか。

彩花さん
2015年ごろにwebメディアでレジンの存在を知りました。わたしは「ガラスの街」といわれている北海道の小樽出身で、身近に感じてきたガラスに似た美しさや透明感をレジンに感じて惹かれたんだと思います。ただ当時は安い資材を使っていたのでなかなか上手くいかなくて、一度諦めてしまったんですよね。本格的に制作を始めたのは2017年頃。ちゃんとしたメーカーの資材を購入して、もう一度挑戦してみたら、きれいにつくることができたんです。それからはレジンをメインに作品を制作していますね。

初めて作品が売れたときのことは覚えてますか。

彩花さん
minneに登録してしばらくは売れなかったのですが、3ヶ月ぐらい経った頃、ひとりカラオケしてるときに「売れました」って通知が来て。

ayk✳︎regolithさんの「【牛柄ピアス〜gold beads】」

それは思わぬ通知ですね。笑

彩花さん
鳥肌が立つほど嬉しくて、ちょっと泣いてしまいそうで、何回も通知を確認しました。それぐらい最初に作品が売れたときのことはよく覚えてます。三角形のフレームの中に、レジンとフロッキーパウダーで牛柄を描いて閉じ込めるという作品でしたね。

ayk✳︎regolithさんの「恋が実ります様に♡桜さくらんぼ ピアス/イヤリング」

彩花さん
始めの頃はなかなか自分の納得のできる作品をつくることができなくて、すごくもどかしい時期でした。それが1年ぐらい続いたのかな。いろいろ試行錯誤してやっと自分の形が見えてきたなと思える作品ができました。それが「桜さくらんぼ」という作品です。

今のayk✳︎regolithの作風にすこしずつ近づいていったんですね。

彩花さん
わたしはひとつのレジンパーツだけで世界観を表現することが苦手なんですよね。いくつかのパーツを組み合わせて世界観を表現してもいいってことにやっと気づくことができました。この作品も丸いパーツができたときに両耳用でひとつずつ付けるつもりで制作していました。ある日「こんなのできました」ってSNSに投稿しようとして、2つセットで手に持って撮影したらさくらんぼみたいに見えることに気づいて。それでさくらんぼモチーフの作品になったんです。

ayk✳︎regolithさんの「午後のひと時〜strawberry tea latteピアス/イヤリング」

その撮影がなければ気づかなかったわけですね。

彩花さん
そうなんです。実はこういうことがよくあって、人気の「午後のひと時」シリーズも最初はポットと雫をそれぞれ別々に片耳ずつ吊り下げるデザインだったんです。それも撮影で作品を手に持ったときにポットから雫が注がれるような角度に気づいて「これをデザインに落とし込めないかな?」と。

最初から「こうつくろう」とデザインしたわけではなくて、つくっていく中で発見していったと。

彩花さん
「かわいいな」とか「これいいな」とかつくっている段階でいろいろとアイデアが湧いてきたり新しいことに気づいて完成していくことがありますね。

ものをいろいろな角度から見ることで新しい発見があるんですね。

彩花さん
このマーブル模様もそうなんです。ミルクティーってミルクを注いだ瞬間、紅茶の色とミルクの白色がふわ〜と混ざり合う瞬間ありますよね。その瞬間が大好きで、それを再現したかったんです。わたしの見ている情景の瞬間を切り取って、作品の世界観に落とし込めたらといつも考えています。

なんだか写真家の感性と似ていますよね。

彩花さん
実は昔写真家になりたかったこともあって。写真って動画と違って、自分が見ている瞬間をピンポイントで見せられる。例えみんなで同じ場所にいても、わたしが撮った写真でないとこれは伝わらないっていうことがあるんじゃないかなと。

それを今は作品づくりで表現されているんですね。

「この人の作品だから」と思ってもらえるように

「午後のひと時」シリーズが人気になるきっかけとなったのが2022年のツイートですよね。minneスタッフの間でもとても話題になりましたよ。

彩花さん
2022年3月のツイートですよね。本当にたくさんの方にリツイートやいいねをいただいてわたし自身驚きました。これだけ注目してもらえると思ってなくて、このときも「こんな作品ができました」ってそこの壁を背景にサッと撮影した写真で気軽にツイートしたんです。
それがいつの間にか広がっていってたくさんの人に注目していただきました。

作家活動の環境も変わっていきましたか?

彩花さん
そうですね。たくさんの方に興味を持っていただけたのは嬉しかったのですが、制作できる作品の数にも限りがあるので、常に販売する形ではなく、1〜2ヶ月に一度再販するという形で今は販売しています。それでもまだまだすべてのお客さんが購入できてるわけではないのですこし心苦しいのですが。

それでも毎回たくさんの数を制作されていますよね。

彩花さん
2022年はできるだけ多くのお客さんに届けたいという思いで、ひとつでも多くの注文を受けようと頑張っていましたね。ただ、それを続けていくと心身ともに疲れてしまって、続けられなくなってしまうなと感じたので、今年は自分の気持ちや身体と相談しながら、お受けできる数で調整しています。それでも制作効率が上がったので制作個数自体は変わってないんですけどね。多くのお客さんが待っていると思うと頑張れます。

SNSのコメントやminneのレビューを見ているとたくさんの方が待ち望んでいるのだとよくわかります。

彩花さん
minneのレビューやメッセージをいただけるとすごく嬉しいですね。何回も読み直してます。あるお客さんは足のリハビリを頑張っていて「ayk✳︎regolithのアクセサリーをつけてお出かけするのを目標にリハビリ頑張ってます!」ってメッセージをくれたり、大学生のお客さんは「ayk✳︎regolithのピアスをつけたくて、ピアス穴をあけました」って教えてくれたり。

ayk✳︎regolithさんのアクセサリーがファンの日常を彩ってるんですね。

彩花さん
わたしの知らないところでいろいろな物語があるんだって思ったら、本当にやっててよかったなと思います。わたしは髪を切りに行くのに、ずっとお願いしてる美容師さんがいるんです。ここからはすこし遠いんですけど、やっぱりその人を信頼しててその人に切ってもらいたいから通っているんですよね。わたしもそうやって「この人の作品だから」って思ってもらえたらなと活動してきたので、すこしずつそう感じてもらえるお客さんが増えてるのかなと思って嬉しいです。

ペルソナは考えない

お家には彩花さんの好きな作家、叢屋さん、botanical-cさんの作品が飾られています。「自然のリアルさや不思議な世界観を感じられるところが気に入ってます」

SNSを見ているといろいろな方からコメントなどの反応がありますね。

彩花さん
さまざまな世代の方に見ていただいてますし、制作段階の写真を投稿すると「かわいい!」「楽しみにしてます」といった声をいただきます。みなさんと一緒にものづくりを楽しんでる感じがしてとても嬉しいです。購入いただいたお客さんは着用写真を投稿してくれることもありますし、身につけるだけじゃなくて飾るために購入しましたっていうお客さんもいますね。お人形さんにつけた写真を投稿してくれたり。わたしが考えていないような自由な使われ方を見ると面白いです。

外国の方からの反応も見られますし、本当に幅広いファンがいるんだなと感心してしまいます。

彩花さん
わたしの作品はペルソナを決めてないんですよね。それがいろいろな人に受け入れられているのかもしれません。

ペルソナを決めないというのは最初から考えていたんですか?

彩花さん
実はまだこの「午後のひと時」シリーズができ上がる前、コロナ禍になってから売上が落ちてしまったことがあって。いろいろ試行錯誤はするんですけど、自分の作品のペルソナは誰なんだろうとか、いろいろ考えすぎてしまいました。そんなときminne LABのまおさんに相談する機会があって。わたしは実験するように作品をつくってるっていうお話をしたら「じゃあペルソナはいらないのでは?」と言ってもらいました。その実験を一緒に楽しんでくれる人がお客さんですよと。

ペルソナがいらないってなかなか考えつかないですよね。

彩花さん
「ペルソナいらないんだ!」って驚いたと同時にすごく救われました。でも確かに今もわたしには明確なペルソナがないんですよね。こういう人につけてほしいとか、このアクセサリーをつける人はこういう格好をしてるだろうとか、そういった理想やイメージはないんです。

確かにペルソナを決めていたら、身につけるだけじゃなくて飾ってくれる人や人形につけてくれる人も現れなかったかもしれないですよね。

彩花さん
そうですよね。イベントに出展したときもギャルが購入してくれたと思ったら浴衣をきた人が購入してくださったり。着物をきてお茶会をするときにつけたいって伝えてくれる方もいましたね。年齢も幅広いし、男性にも購入していただいたり。自分がいいなと思うものをつくっていたら、それを好きな人が集まってきてくれました。

ペルソナを決めないからこそ出会えた人たちですね。

手間と時間は惜しまない

「午後のひと時」シリーズの制作過程もすこし覗かせていただきました。
ずらりと並ぶティーポットにはそれぞれの違う色のレジン液が流し込まれています。

レジン液がきれいに入っていますよね。すごく繊細な作業だと思いますがきれいに入れるコツはあるんですか?

彩花さん
レジン液は流し入れた後に1日置いておくんです。そうすることでゆっくりとレジン液が下に流れてキレイな見た目になります。

なるほど、下に流れていくのを待つんですね。それはその分時間もかかりますよね。

彩花さん
そうですね。1日置いたあとにレジンを固めてから次の工程に移っていくので意外と時間がかかっています。

レジンを固めたあとはどのような工程になるんですか。

彩花さん
レジン液が固まったら金具を取り付けていきます。まずは金具の変色や黒ずみを防ぐために変色防止剤を着けていきます。この工程のあとに取り付けていくんです。

これもひとつひとつ細かい作業ですね。

彩花さん
細かくて大変ですが、これをやることで作品が届いたときの状態が長く保たれるので大切な作業です。やっぱり作品が届いたあともがっかりせずに永く愛用してもらいたいので、その分大変ではありますが外すことのできない工程ですね。


想像以上に手間と時間がかかってるんですね。机に並んだティーポットがライトに照らされてとてもキレイです。

彩花さん
たくさん制作した後はずらりと並んだティーポットがすごくキレイなんですよね。このライトに照らされてキラッとした瞬間がわたしは大好きなんです。

これからも作品づくりを楽しみながら

これからやってみたいことはありますか?

彩花さん
まずは今求めてくださるお客さんの手にしっかりと渡るように、作品制作を頑張っていきたいです。おかげさまで作家活動とプライベートのバランスも取れていて、すごく楽しく活動できています。これまで通り新作をつくりつつ、真摯に作品づくりに取り組んでいきたいです。

まだまだayk✳︎regolithさんの作品を待っているファンはたくさんいますね。minneとしても応援しています。

彩花さん
minneさんのおかげでたくさんの夢を叶えることができました。本に掲載されるのもそうだし、月間ランキングに載るのも夢でした。いつかこうやって対面で取材されるのも夢だったので、わたしも本当に嬉しいです。

それはそれは。僕たちも夢のお手伝いができてとっても嬉しいです。これからのご活躍も楽しみにしています。

2023年11月18日(土)21:00〜 ayk✳︎regolithさんがこれまで制作されてきた作品の再販がスタートします。記事でも紹介した人気の「午後のひと時」シリーズから、しばらく販売のなかった作品も記事の公開に合わせご用意いただきましたので、ぜひご覧ください。

「ayk✳︎regolith」さんのショップページはこちら

取材・執筆・撮影:真田英幸

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